Nursing&Education&Technology

看護とインストラクショナル・デザインを中心に、備忘録として残すブログです

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看護師が医療・看護・教育工学について語ります。

澁澤 龍彦『快楽主義の哲学 』

 

 

ある本で「幸福」と「快楽」は別であるという主張がなされていた。
快楽はドーパミンが放出され、刹那的である性質がある。
一方、幸福は長期的に持続する性質があり、快楽が得られなくても幸福になれるとあった。

この本はそんな「幸福」を真っ向から否定してくる。
そんな生ぬるいものではなく、刹那的な快楽を追い求めろと。
頷くところもあった。
幸福にはなれるものならなりたいが、普段の日常で幸福を追い求めているかと言ったら、追い求めてはいない。
今やれることを頑張り、なるべくベストを尽くす。
意識しているのはそれくらいだ。
そしてたまに報われることもあり、「良かった」と感じる。

ただこの本で述べられている幸福のイメージは、現代を生きる私たちからすると違和感を感じた。
この本は1996年に出版されたものであり、当時の幸福観はいわゆる「良い大学を出て、良い会社に入って、定年後はのんびり〜」のようなイメージを指していると思われる。
現代はそのようなイメージを持っている人のほうが稀であり、幸福=退屈のような感覚はない。

そして快楽主義という名の下、皆が傍若無人に振る舞う社会が良いとは決して思わない(少なくとも、僕はそのような社会は怖くて嫌だ)。
本書の冒頭で、18世紀の啓蒙哲学者の言葉を引用して「幸福な野蛮人」という概念が紹介されている。
理性的でありながらも、自分の感性を発揮する。
そんな生き方をしていきたい。