看護管理と聞くと、管理職でない自分には縁がないイメージだ。
おそらく普通だったら行かないだろう。
それなのになぜ申し込んだのか。
それは講師がぜひ一度話を聴いてみたかった方だったからである。
なんと講師は井部 俊子先生である。
医学書院ホームページの「看護のアジェンダ」というコラムが好きなのだが、「この人は只者ではない」と感じていた。
そんな井部先生が講師ということで、これは行くしかないと直感したため申し込みに至った次第である。
会場は大阪だ。
セミナーが終わり、率直な感想としては
井部先生はやはり只者ではなかった。
物事の本質を、端的に、そして鋭く斬り込んでくる。
あんなに鋭いファシリテーターは見たことがない。
突っ込む論点が的確であり、用いる言葉も躊躇がない。
斬られる人は覚悟がいるだろうが(笑)、自分が困っていることや悩みが極めてクリアになったのではないだろうか。
このセミナーは井部先生の講義のあとはプレゼン→ディスカッションという流れだった。
いくつかの興味深いテーマが議題に上がったので、簡単に紹介してみたい。
多重課題
中堅くらいになってくると、避けては通れないのが多重課題。
その根本的な原因が、いくつもの役割を兼務しなければならないということ。
この問題に対して、井部先生はこう答える。
兼務はしない
役割を課す側だけでなく、引き受ける側にも問題はあると指摘していた。
日本人の性質?でもあるのだろうが、断らないことが美徳とされるような節がある。
ただ「やりたくないからやらない」ではなく、できない根拠(エビデンス!)をしっかり述べることが重要だと述べていた。
どんなに能力があろうと人間に与えられた時間は24時間だ。
その限られた時間のなかには、仕事だけでなく趣味や家族・友人と過ごす時間も当然ある。
それらが整えられてこそ、最適なパフォーマンスが発揮できる。
当たり前のことかもしれないが、看護管理学的見地から考えることで、働くことの本質が浮き上がってきたように思う。
「優秀なリーダーは、優秀な部下によってつくられる」
先生はそのようにおっしゃっていた。
上司や環境に依存するのでなく、自分が力を発揮でき、そして健康に楽しく働ける環境は自分の手で作っていく意識を忘れないようにしたい。
発信力
「発言力が弱い」ということが議題に挙がった。
医療業界は何かとカンファレンスが多い。
そのような場での「発言力」を指すのだろうか。
井部先生曰く、「看護師は自分を下げるような表現を使うことが多い」とのこと。
言われてみると、本当にその通りだと思う。
なぜだろうか。
看護の悪しい風習が影響しているのだろうか。
対人援助の仕事だから?
基礎教育の影響?(これから十分に意識したい)
井部先生はこう述べていた。
「もっと能動的な言葉を使いなさい。相手にちゃんと届く言葉を使いなさい。」
井部先生の言葉には確かな力があった。
僕も何かを発するとき、自分の言葉をしっかりと相手に伝えるよう意識していきたい。
看護管理の継承
最後に「看護管理の継承」と題して、井部先生からまとめがあった。
そのなかに「知性」の話があった。
知性には2種類あるらしい。
1.考える知性
2.感じる知性
僕たち人間は、考える知性を中心に生活している。
しかし日常では顕在化しない領域には、さまざまな感情が蠢いている。
人は根本的には、理屈でなく感情で動いている。
「もっと感情を大切にしなさい、感情をちゃんと言葉にしなさい」
井部先生は最後まで力強く激励を送ってくれた。
自分の予想以上の内容で、参加して本当によかった。
自分の直感(感じる知性?)を誉めたい。
井部先生のように、 力強い言葉を投げかけられる人になりたい。
とりあえずドラッカーを再読しようかな。