Nursing&Education&Technology

看護とインストラクショナル・デザインを中心に、備忘録として残すブログです

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看護師が医療・看護・教育工学について語ります。

Appleのプログラミング学習「Swift Playgrounds」を学習心理学の観点で考察してみる

昨今はプログラミング学習が非常に熱い。
教育に携わる者として、プログラミング学習を学習心理学の視点で考察してみたい。

 

心理学

その前に、そもそも「学習心理学」とは何か?という問いから入ることにしよう。


学習心理学(がくしゅうしんりがく、psychology of learning)は、学習、すなわちヒトを含む動物が経験を通して行動を変容させていく過程を研究する心理学の一領域である。

Wikipediaより引用

つまり学びのプロセスそのものを研究する領域といえる。
今回は学習心理学にも色々あるようだが、なかでも「行動主義」の観点から考えてみたい。

 

行動主義

行動主義の定義を調べてみた。

行動主義は人間の行動を予測し、制御し、説明することを目指す実験心理学の一種である。

日本イーラーニングコンソシアムより引用

つまり、人が刺激に対してどのような反応を示し、学習していくのかを明らかにしようとする領域である。

プログラム学習

行動主義から派生したものとして「プログラム学習」がある(プログラミング学習ではないことに注意。ややこしい。)。
プログラム学習とは、学習者が目標に向かって段階的に解かせる問題を配置した教材を活用する学習方法である。

プログラム学習を行動主義にあてはまてみると、何かの刺激(問題)を与え、それに対して反応(学習)するメカニズムを利用した学習方法といえる。

プログラム学習には以下の5原則がある。

1. 積極反応の原理
  学習者の問題に対して積極的に反応させるようにすること。
2. 即時確認の原理
  反応に対して即座にフィードバックをすること。
3. スモールステップの原理
  はじめは優しい問題から始めること。
4.自己ベースの原理
    学習者が自分のペースで学習できるようにすること。
5.学習者検証の原理
  学習者がどれだけ学習できたかで教育の効果を判断すること。

鈴木克明(編著)(2004)『詳説インストラクショナルデザイン:eラーニングファンダメンタル』NPO法人日本イーラーニングコンソーシアム(パッケージ版テキスト)第4章

 

Swift Playgroundsを考察してみた

この5原則に沿って、Apple社が提供しているプログラミング学習教材である「Swift Playgrounds」を考察してみたい。

さすがはApple社が提供しているサービスで、難しいコードを書くことなく、遊び感覚で「プログラミング思考」を学習することができる教材である。
何事も経験だということで、私も一通りやってみたことがある。
今思うと、Playgroundsにはプログラム学習の5原則が見事に取り入れられていたように思う。

積極的反応の原理
学習者は「プログラミング学習初心者の子ども」を想定していることもあり、子どもが反応しやすいようなキャラクターやシチュエーションがデザインされている。
良い意味で「勉強」という雰囲気はなく、ゲーム感覚で取り組めるよう設計されている。

即時確認の原理
ステージ毎に問題が設定されており、自分が書いたプログラミングが適切かどうかはキャラクターを動かして検証することができる。
狙い通り作動しなければ、再度取り組むよう指示がでる。
正解しなければ次のステージには進めないような仕組みになっている。

スモールステップの原理
ステージはシンプルな動きから始まり、進むにつれて複雑になっていく。
また学んできた知識を応用させる必要も出てくるため、各ステップがつながっている。

自己ペースの原理
完全に自身のペースで進めることができる。
学校で使うとなると、ある程度のペースメイクは必要だろう。

学習者検証の原理
プログラミングは適切でなければ作動しないため、学習者検証の原理と非常に相性が良いと感じた。
プログラミングは正誤がハッキリしているが、ステージをクリアするためのプログラムはひとつだけではなことも多い。
ただ目標を達成できたか否かだけでなく、創造性を発揮する機会にもできるだろう。

このようにプログラム学習の5原則に当てはめて考えてみても、Playgroundsは非常によくできた教材であることがわかった。

まとめ

僕も仕事で教材を作成することがある。
しかしこれまで理論に基づくことはなく、我流で作っていた。
看護にもエビデンスが求められているように、教育にもエビデンスを求めていくことで、質の高い内容が提供できるのではないか。
オリジナリティを出すのも大切かもしれないが、少しずつ先人の知恵である研究成果を実践に取り入れていきたい。