心に迫ってくるような文章だった。
らい病の施設で、筆者が医師として勤務した経験をもとに、さまざまな文献を用いながら「生きがい」について書かれている。
僕がこうして、少なくとも今をしっかり生きられているのは、やはり生きがいを持てているからだ。
自分なりに将来の展望があって、やりたいことをやって、今と未来が地続きに繋がっている。
でも、自分が思い描いていた未来が突如閉ざされてしまった人が過去にいたという事実。
自分がもしそうだったらどうだっただろうかと、想像してみる。
本書で登場した人たちのような精神世界を生きることができるだろうか。
私たちが生きる社会は確かに物質的には豊かになった。
しかし精神世界が豊かなのかと言われると、そこは素直に頷くことはできない。
僕は不自由なく、恵まれて、いわゆる一般的な?日常生活を営めている。
しかし本書で登場する人々の言葉に触れて、自分の精神世界の豊かさについて考えさせられた。
本書は2000年以前に書かれたが、以下の文章は現代社会の問題をそのまま表現しているといっても過言ではない。
生活を陳腐なものにする一つの強大な力はいわゆる習俗である。生活のしかた、ことばの使いかた、発想のしかたまでマスコミの力で画一化されつつある現代の文明社会では、皆が習俗に埋没し、流されて行くおそれが多分にある。かりに平和かつづき、オートメイションが発達し、休日が増えるならば、よほどの工夫をしないかぎり、「退屈病」が人類のなかにはびこるのではなかろうか。
本書より引用
現代社会はあらゆるものがオートメイション化し、効率や生産性はとてつもない進歩を遂げている。
そのような社会だからこそ、より「生きがい」が求められるようになったと言っても過言ではない。
生きがいは別に大層なこと、例えば起業やクリエィティブな仕事をしている人だけの特権ではない。
本書では生活が制限されながらも、毎日を豊かに暮らしている人たちの息遣いが確かにあった。
心にゆとりをもつこと、自分の感情を大切にすること。
毎日の暮らしを豊かに生きていきたい。