久しぶりに小説を読んだ。
朝井リョウさんの「正欲」。
登場人物の何人かは、自分の「性的嗜好」に悩んでいる。
いや、「悩んでいる」なんてものではない。
マズローやケンリックの欲求ピラミッドではそれぞれ扱いが異なるが、「性欲」は人が生きていく上で根源的な欲求である。
それが「普通」でないと、どんな生き様になるのか。
登場人物の心理描写がリアリティを感じさせてくれた。
しかし本書のテーマは性欲ではないと思う。
それは何かというと「多様性」だ。
一時期流行っていた言葉で、ダイバーシティなんて言葉も使われる。
しかしこの言葉を本当の意味で実現するには、高い人間力が要求されるだろう。
決して自分とは相容れない人を受け入れ、ともに働いたり、暮らしていくことが求められる。
多様性とは、綺麗事ではなく、もっと複雑な、そして決して軽い気持ちで使ってはいけない言葉なのだということを思い知らされた。